転倒などを避けるため、自転車は使わないことにした。私は徒歩である場所へと向かう。
【今家を出たからね】
私は携帯でメールを送信した。
今日の島はまるで嵐の前の静けさのように静まり返っている。海は穏やかなのに、カモメは一匹もいない。もやっとした生暖かい風が吹き、空は曇天で濁った灰色をしていた。
ブーブーと携帯が手の中で振動していて、てっきり先ほどの返事かと思えば受信者は美貴だった。
【皐月、暇だよー。これからみんなで剛の家に集まらない?】
大人たちは台風の備えで忙しいというのに、やっぱり子どもは外出ができないと暇をもて余すだけみたいだ。
【ごめん。今日は用事があるんだ】
私はすぐに返信をして誘いを断った。
天気予報では夕方から風と雨が強くなると言っていた。それなのにぽつりと、一粒の雫が顔に当たり、予報よりも早く雨が降ってきたようだ。
……急がなくちゃ。
私ははや歩きで、坂道を登った。その先に立つ白い外観を平屋。それは津崎の家だった。
私たちはあの祭りの夜に約束したのだ。21日の今日だけは一緒にいること。私が津崎の家に行くからどこにも行かないでほしいと。
津崎は不思議な顔をしていたけど、深い理由を聞かずに『わかった』と言った。



