ばいばい、津崎。






それから島は慌ただしくなった。テレビのニュースで台風接近の予報が流れたからだ。大型台風はゆっくりとした速度で島に近づき、21日の夜に上陸する。

元々、雨量が少ない島では台風というだけで一大事なのに、そのうえ上陸といわれれば住人たちは大慌てで、台風の備えをはじめていた。


「皐月ー。ちょっと手伝って」

お母さんに呼ばれてリビングに行くと、その手にはガムテープを持っていた。どうやら窓を補強しているらしい。


「こっちから貼っていくから、皐月は剥がれないようにしっかり持っててね」

「うん」

窓ガラスの内側にテープを米印になるように貼っていき、これで仮にガラスが割れたとしても飛散防止になるようだ。


「あと玄関のドアも立て付けが悪いからなんとかしない。あ、断水した時のための生活水も今のうちに確保しておいたほうがいいわよね!」

お母さんも台風の影響で、てんやわんやになっていた。

とりあえず私も浴槽に水を溜めたり、庭にある植木を家の中へ移動したりして、ひととおり手伝い終わったあとに部屋着から私服に着替えた。


「お母さん、私出掛けてくるからね」

天気予報を不安そうに確認しているお母さんに告げた。



「なに言ってるの?危ないから今日は家にいなさい」

タイミング悪くニュースでは台風接近地域の住人はなるべく外出を控えるようにと、警告している。「ほら」とお母さんがテレビを指さすから、私は曖昧な表情をして誤魔化すように頬を掻く。


「もう約束してるから」

「ちょっと、皐月っ……!」

お母さんの制止をムシして私はハイカットのスニーカーを履く。玄関まで追ってきたお母さんは後ろで文句を言っていたけれど、私はキュッと靴紐をきつく結んだ。


「大丈夫だから。行ってきます」

私はそう言って、外へと出た。