ばいばい、津崎。



「海に飛び込むなんて、そんなこと絶対に許さないからね」

気づくと私は津崎の手を強く握っていた。

「そんな怖い顔するな。冗談だよ」と、津崎は白い歯を見せる。てっきり払われると思っていた手は重なったまま。



「……嘘はついてないよね?本当に本当に怖い病気じゃないんだよね?」

私は確認するように問いかけた。


「うん。手術も必要ないし、薬さえ飲んどけば治る病気だよ。だからあいつらには黙っておけよ。無駄に騒ぎ立てるだろうし、大事にすることじゃねーから」

私がコクリと頷くと、津崎はホッとしたように微笑む。


「じゃあ、ひとつだけ私のお願いを聞いて」

津崎の手をぎゅっと握りながら、私は息をはくように言った。


「8月21日だけ空けておいて。なにがなんでも私と一緒にいて」


その日さえ過ぎてしまえば未来は変わる。10年後も笑っていられるように。きみが26歳になれるように、私は絶対に津崎の手を離さない。