「俺、バチが当たったんじゃねーかって思うんだよ」
テトラポットに打ち付ける波より静かな声。
「女手ひとつで育ててくれた母さんには反抗ばっかりで、思春期に託(かこ)つけて素行が悪いことばっかりして。そういう報いがこんな形になったんじゃねーかって、ここに来ていつも思ってた」
私は津崎の見えない場所で手に力を入れた。
津崎は自分のことをとても下げた言い方をするけれど、津崎はバチが当たるような人間じゃない。そんなことで病気になるのなら、不幸になっていい人間なんて山ほどいる。
「……いつ、病気だって分かったの?」
「去年の夏」
体に不調があり、たまたま行った病院で発覚したと津崎は淡々と説明してくれた。そして大きく深呼吸をしたあとに星を見るように空を仰ぐ。
「なんか中途半端に病気に蝕まれるくらいなら、いっそのこと海に飛び込んだほうが誰にも迷惑かからないんじゃないかって思うよ」
脳裏によみがえるあの日の光景。一生ぶんの涙を流し、一生ぶんの後悔を背負った、あの嵐の夜のこと。



