ばいばい、津崎。



きっと剛の家からの帰り道のことを言っているんだろう。

うん。私もかなり落ち込んだ。でもそうやって刺々しい態度をとる理由があるんだろうなって勝手に解釈してた。

それで次の日に津崎は長い間、島を離れてしまったから、確かめるすべはなかったけれど、こうして〝らしくない〟ことばかり津崎を見て、やっぱり私の予感は当たっていたんだと、胸が痛くなっている。


「旅行なんて、嘘でしょ」

ずっと胸騒ぎがとまらない。

二週間ぶりに帰ってきた津崎は、どこか吹っ切れたような清々しい表情をしているから、すごくすごく怖い。

なにかひとりで決意してしまったんじゃないかと、イヤなことばかりを考えてしまう。


「全部が嘘なわけじゃねーよ。ばあちゃん家に行ったのは本当だし、あと親戚の家とか回ったり」

津崎は黙って海を見つめていた。

私は急かすこともなく、続きの言葉を待つ。そして静かにその唇が動いた。



「俺、心臓の病気にかかってんだよね」

……ドクン、と鼓動が跳ね上がって、息をするのも忘れていた。


「心臓の……病気?」

そう繰り返すことで精いっぱい。あの薬を見つけた時点で、なにか津崎の体に潜むものがあることは薄々気づいていた。

それでも現実を目の当たりにして、情けないほど私は動揺している。


「でもべつに大したことじゃない。ただ今後のことでお金がかかるからって、母さんが親戚の家に頼みに行ってただけ」

「……治療費とかってこと?」

「まあ、な」

津崎の歯切れのわるさが気になった。


「本当に大丈夫なの?どんな病気?」

医療の知識はないけれど、やっぱり心臓と聞くと軽いものは想像できない。私の不安とは裏腹に津崎は安心させるような笑みをこぼした。


「大丈夫だよ。本当に大したことじゃねーんだ」

そう言われても笑顔で返すことはできない。