ばいばい、津崎。



風にのって、ふわりと津崎の匂いがする。津崎は薄手のTシャだから腕を回していると体の感触がかなりリアルで、今顔を見られたら、たぶん私は林檎飴より真っ赤になってると思う。

浴衣の私を気遣ってか、津崎の漕ぐ自転車のスピードはいつもより遅かった。


「……なんか今日の津崎、ヘン」

口の中に空気を溜めるような含み声で、ぼそりと呟いた。


林檎飴をひと口食べたり、こうしてぎゅっと腕を回すことも許してくれる。嬉しい気持ちはあるけど、少し怖い。このあと、良くないことが起きる予兆なんじゃないかって。


「ヘンなお前に言われたくねーよ」

独り言だったのに、津崎にはどうやら聞こえていたらしい。……地獄耳。

自転車はお祭り会場からどんどん離れていき、瞳に映る景色が見慣れたものへと変わっていく。津崎が自転車を停めたのは、いつもの防波堤だった。

ここはとても静かで、お祭りの明かりも灯籠の灯火も届かない。自転車が降りた私たちは先端部分で腰をおろした。

津崎はあぐらをかき、私は浴衣なので横座り。

海からなびいてくる夜風がとても気持ちいい。


「この前、ちょっと強いこと言ったなって反省した」

先に口を開いたのは津崎だった。