ばいばい、津崎。



お祭りが終わり、美貴と剛と哲平とはその場で別れた。そして私たちは場所を移動することになり、津崎の自転車が停められているところへと向かった。

会場前に用意された駐輪場は本当に満車だったようで、津崎の自転車は道端の草むらにぽつりと置かれていた。


「あ、荷台にカマキリいる」

「ひぃ……っ」

薄暗くてよく見えないけど、たしかに自転車の後ろには黒いなにかが微動だにせずにいる。


「ムリムリ。早く取ってっ!」

私は下駄の音を鳴らしながら後退り。津崎は普通にカマキリを掴み草むらへと逃がすと「お前、本当に怖がりだよな」とバカにしたように笑みを浮かべる。

そして「もう平気だよ」と、津崎は自転車にまたがった。


カマキリがいた場所に座るのは少しイヤだけど、文句を言ったら「じゃあ、お前が漕げ」なんて言われかねないので、私は荷台へと座る。

今日は浴衣だから左側に両足を揃えてちょこんとお尻を乗せてみたけれど、かなりバランスが悪い。

すると津崎は顔だけをこちらに向けて「ちゃんと掴まっとけ」と、不器用に言う。


以前、ふたり乗りした時はTシャツの裾を小さく握るだけだったけど、今日はしっかりと津崎の腰に手を回した。

大きな背中から伝わってくる暖かい熱。きっとこの鳴りやまない心臓の音は津崎にバレているだろう。


「じゃあ、行くぞ」

津崎はそう言って、自転車はゆっくりと進みはじめた。