ばいばい、津崎。



それから灯籠流しの時間になり、人の波が海岸のほうへと向かっていく。会場で配られた灯籠のカゴを持ち、私たちもその場所を目指した。

暗闇にぽつりぽつりと浮かぶオレンジ色の火。
それがひとつ海へと流れると、それぞれが持っている灯籠をそっと水面に置いていく。

灯籠のカゴには水に溶ける紙灯籠が使われていて、そこには文字が書いてある。様々な漢字一文字が菊の花の模様の横に記されていて、美貴は〝夢〟剛は〝祈〟哲平は〝和〟。

選んだわけじゃないのに、私と津崎は偶然にも〝願〟だった。


海岸に横並びになり、美貴が先頭に灯籠を流すと、剛や哲平もそれに続く。私も灯籠を水の上に置き、背中を押すように前へと流す。

同じタイミングで津崎も手を離し、私たちの灯籠はゆらゆらと灯火を揺らしながら夜の海へと渡っていく。


「……綺麗だね」

灯籠流しの意味を考えると、あまり幻想的だと思ってはいけないのかもしれないけど、幽玄の明かりがまるで光を放つ花のようだった。

私はふと、隣にいる津崎を見た。

津崎も海に浮かぶ灯籠からずっと目を離さなかった。


その瞳はとても切なくて、きみが誰にも言えないなにかを抱えていることを知っている。

もう時間がない。嫌われても避けられても、なんだっていいから、私は絶対にきみを失う未来だけは繰り返したくない。


「津崎――」と、言葉を言いかけて、それに重なるようにして聞こえてきた声。


「なあ、山本。このあと、時間ある?」

津崎の声が、とても弱いものに感じた。