みんな変わってる。大人になって、良い方向へ。
いつまでも、立ち止まっているのは私だけだ。
「おい、それ日本酒じゃん」
店員が運んできたのは辛口の純米吟醸酒。アルコール度数は15%。値段はちょっと高いけれど、そのぶん口当たりがよくて、気持ちよく酔える。
「いーの。剛と違ってお酒は強いんだから」
本当はやめようと思ったけれど、気分が変わった。今日はとことん飲んでやる。
お猪口に注がれたお酒を飲むと、喉の奥がカーッと熱くなって、いい感じに頭がぼんやりとしてきた。その勢いもあって、普段言わないような言葉が口から出てきた。
「みんな偉いよねー。地に足を着けててさ」
美貴も剛も本当に頑張ってるし、しっかりしてるし、自分だけがひどく離れた場所に置いてけぼり。
こんな大人にはなりたくないなって、昔思っていた大人に私はなってしまった気がする。
平気で嘘をついて、作り笑顔を取り繕って、お酒の力を借りないとなにも言えない、そんな人間にいつの間にかなっちゃったよ。
「皐月だって偉いじゃん」
「……え?」
二口目を飲もうとしていた私の手が止まる。剛はとても優しい顔をしていて、まるでお兄ちゃんのような目をしていた。



