「……なんだよじゃないよ。今どこにいるの?」
ずっと音信不通で、突然旅行とか言って帰ってこなくて。私は津崎がいないとこんなにも不安定になってしまうのに、なにも言わずにいなくならないでよ。
「早く来てよ、待ってるから」
こんなこと言ったら押し付けがましいけれど、本当は浴衣だって津崎に見てほしくて着てきた。
津崎とどうにかなりたいと思ってるわけじゃないのに、やっぱり少しぐらい良く思われたいと考えている自分がいるのだ。
『そんな歩きにくい下駄で、また足が痛くなっても知らねーぞ』
「……え?」
『後ろ』
私はゆっくりと振り返った。人混みの中にたたずむその瞳は私をじっと見つめていた。
ドクンと、心臓が大きく鼓動する。それと同時にじわじわと熱いものが込み上げてきた。
「……遅いよ。来ないかと思った」
お互いに携帯を閉じて、電話越しじゃなくても今はしっかりと津崎の声が私に届く。
「チャリ置き場が満車で停められなったんだよ」と、津崎が不器用に呟いた。
久しぶりに見た津崎の顔。
なんだかそれだけで、泣きそうだ。



