「どうする?行く?」
剛のその言葉に、ふざけてるわけでも、誤魔化そうとしているわけでもないけど思わず「フッ」と笑ってしまった。
「行かないって言ったらどうするの?……っていうか、私を連れて行こうっていう計画でしょ?」
今まで美貴や剛に何度も帰ろうと誘われてきた。最初は笑って流して、次は休めそうにないと仕事を理由にして、次は私のことはいいからと、突き放した。
そんなやり取りをずっと繰り返していく内に、みんな私に島の話をしなくなった。私ができないように予防線を張っていたのだ。
だから今回〝みんなで帰ろう〟と誘ってきたのは、最終手段のような気がして、それを断ったら私は多分、二度とあの島に行くことはないような気がしている。
「ちょうどあの夏から10回忌だし、みんなで手紙でも書いて海に流そうって。健に伝えたいこと、皐月が一番あるんじゃない?」
あるよ。ありすぎる。あの夏から10年が経ったのに、込み上げてくる想いはなにひとつ色褪せることはない。
私は剛の言葉をはぐらかすように「すいませーん」と店員を呼んで、追加の飲み物とつまみを頼んだ。
剛は私の数少ない友人の中で、一番島への愛着がある。オタクだと思われていた剛も、その性格の良さで今では島に残っている他の同級生とも交流があるらしい。
まさか剛がこんなにも人付き合いの上手い大人になるなんて想像すらしてなかったけれど、私も何故か剛には月一で会いたくなるし、そういう人を惹きつける魅力があるんだと思う。



