津崎は昇降口近くの開(ひら)けた場所にいた。駆けつけた時にはすでに人だかりができていて、前に進めない。
「す、すいません。通してください」と、なんとか人混みをかき分けて肉眼で津崎が見えた頃には、足元に3年生の男子生徒がふたり倒れていた。
辺りには生々しい血が飛び散っていて、先輩のものか津崎のものか分からない。津崎はうずくまる3年生を見下ろすように立っていた。
「お前、なにしてんだっ……!」
津崎の腕を掴んだのは担任だった。いつの間にか他の教師たちも駆けつけてきて、養護教諭は倒れている3年生に。男の先生は津崎を取り囲むようにして距離を詰める。
「なんでこんなことしたんだ」
そう聞かれても津崎はなにも答えない。
すると、顔を歪ませている3年生が津崎のことを指さして「い、一方的に殴られたんですっ!」と強調する。
周りでは「やっぱりな」と、みんなが声を揃えていて、津崎に対する風当たりが冷たい。
「お前、謹慎明けて間もないのに、なにをしてるんだ。学校の秩序ばかりを乱すな」
担任が苛立ったようにため息をつく。津崎はギロリと睨みつけたけれど、この状況では逆効果。
「早く謝れ」と周りも煽りはじめ、先生たちは「互いの親御さんに連絡しますか?」と、かなりヤバい雰囲気。
私はなんとか津崎を庇おうと足を前に出す。
でも、それよりも先に響いたひとつの声。
「そういう、津崎くんだけが悪いって決めつけるのやめませんか?」
騒然としていた空気が一瞬で変わり、みんな口を閉じる。その声の主のほうに目を向けると……それは哲平だった。



