ばいばい、津崎。



駅まで続く川沿いの道を歩き、夕方だというのに暑さはまったく和らいでいない。

どこからか聞こえてくるセミの声。姿は見えないのにこんなに耳に響いてくるなんて、一体どんな声量をしているのだろうと下らないことを考えながら駅へと着いた。


私が乗ったのは大宮まで行く電車ではなく、浅草行きの上り電車。そこから16分揺られて、着いたのは北千住。(きたせんじゅ)

私は駅前の居酒屋へと入り「おひとりさまですか?」と店員に聞かれたところで「連れが来てるはずなんですけど」と、伝えるとすぐに奥の個室へと案内された。


「よう!」

そこにいたのはスーツ姿の男。『最近中性脂肪が気になる』と言っているけれど『ぽっちゃりなのは昔からだよ』と返すと高校時代と変わらない顔で笑う。

そんなことを言い合えるぐらい私たちの付き合いは長い。


「今日、仕事だろ?なんかいつもより来るの早くない?」


彼の名前は張間剛。(はりまたける)

同じ島育ちで、美貴が言っていた〝みんな〟の中のひとり。私が唯一連絡を頻繁に取っていて、こうして月に一回は一緒にご飯を食べている。

美貴の家を出てすぐに剛からメッセージが届いて、こうしてそのまま待ち合わせの店に来たのだ。


「今日は早番だから17時上がりだよ」

救急車で運ばれて仕事を休んだなんて知られたら「飲んでる場合じゃない」と怒られて強制的に帰宅させられてしまう。

今日はとても飲みたい気分だった。どうせ家でひとり酒する予定だったし、剛がタイミングよく誘ってくれて良かった。