ばいばい、津崎。



それから美貴と夕方までお喋りをして、お昼寝から起きた羽菜に振り回されながら夢中になって遊んだ。

そして駅まで送るという美貴に「大丈夫だよ」と言って、私は玄関で靴を履く。歩けるようになった羽菜はペタペタと廊下を走り回っていて、一歳六か月の体力は底知れない。

美貴に突撃してきたところを捕まって「ほら、皐月お姉ちゃんにご挨拶」と、羽菜は抱きかかえられている。


「じゃあね、また来るからね」

私が羽菜の頭を撫でると「ばいばい」と恥ずかしそうに返してくれて、手のひらにタッチまでしてくれた。


……なんて可愛いんだろう。

子どもは苦手なほうだけど、美貴の子どもだからか天使のように見えてくる。
 
写メもいっぱい撮ったしストレスが溜まった時には羽菜を見て癒されよう、なんて思いながらドアノブに手をかけると――。


「皐月」

ひき止めるような美貴の声。


「またいつでも遊びにきてね!」

まるで私が遠くに引っ越しでもするかのように不安そうな瞳をしていた。


私の住んでいる大宮から草加までは電車で一時間もかからない。同じ埼玉県だし、明日にでも会おうと思えば会える距離。


それでも、きっと美貴は知っているのだ。

私の心がひどく不安定なことを。

いつ消えてもおかしくない。まるで津崎のように前触れもなくいなくなれるぐらい、私は今の現実に足を着けていない。


「ありがとう。また連絡するよ」

私はそう言って、美貴の家を出た。