翠は、なんだかんだと俺のお願いを聞いてくれる。


今だって小首を傾げて、

「ん?」

と促すと、




「こ、今回だけだからね!」




と、ぷいっと向こうを向いてしまった。


横顔が、少し赤くなってて、くすりと笑ってしまう。

だってその仕草が、可愛いな、と俺は思ってるから。

…それ、本人に言ったら殴られそうだけど。




最初の印象こそあまり良くなかったけども、翠は凄い努力家で、真っ直ぐで、それでもって純粋だ。


俺は、それを知った途端、忽ちこいつを好きになった。



だからこそ、No.1の座は渡す事が出来ない。

渡してしまったら、それで俺に興味を失くされるんじゃないかと、そう…思っているから。


それが、とてつもなく怖いから。


「翠、んじゃあ、またあとでな」



ぽん、と頭に手をやると、カッと頬を染めて「やめろー」と騒ぎ立てる翠は本当に可愛らしい。