ワァーワァーと、歓声と掛け声で渦巻いている体育館。
今日も、この場所は女子生徒の間で、大人気だった。
私も、毎日の日課のように通っていたから…なんでなのかは良く分かる。


『大津先輩!ナイスシュート!!』

『あっ!こっち向いてくれた!!やだー!超格好いいー!!』


そう、女子の目当ての殆どが、この人…大津健(おおつたける)…私の昨日までの彼氏だったから。
そんな黄色い声に、照れ臭そうに応じてる彼に、一つ溜息を吐いて、私は体育館の半面の方へ視線をやった。
そこには、私の唯一の理解者である存在が汗を流していた。
その人は、私を見つけるとすぐに寄って来て声を掛けてくれる。


「あ…爽香ちゃん。やっほー。どうした?気分悪そうだけど…あ、アイツ、呼ぶ?」

「ううん。大丈夫。てか、彼とはもうなんでもないから…ただの、友達だから…」

「あー…ごめんね?そっか…やっぱ、ダメだった?…爽香ちゃん、自分のことあんまり喋んの得意じゃないもんねー。…とりあえず抱え込まないように、俺でよければ話してね~?」


そう言って、軽く私の頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
この人は、二つ上の大塚永久(おおつかえいじ)先パイ。
いつもいつも、この人の優しさに、…私はダメだと思いながらも溺れてる。