閉じ込められていた時間が幼さの大半である黎は、ただ固定された空間の中にいない時間がすきだ。 夜の散歩で―― 昨日は更に食事の日だったので、飲まされた不味い血の残り香を振り切るように月夜を歩いていた。 どこでもないところへ行きたいと。 ――ああそうだ。 一度は母の育った家を見てみたい、とか、そんな益体もないことを考えながら。 そんなことで時間を潰していたら、香って来た。 たぶん、人生で初めて自分から探したもの。 月の香りの、少女。 ……あの夜は、はっきり言って不可解だ。