「黎」 澪は名を呼んだ。 「ん?」 黎は眼鏡を押し上げ応じた。その奥の瞳は黒い。 さっきまでぼけーっと書類を見ていたけれど、今ははっきりしている。 「ねえ黎。何かあった?」 黎の様子がおかしい。 澪は昨日、黎に血をやった。 しかし黎は澪の血が気に召さないらしく、吸血のあとはいつもふらりと消える。 今まではただ時間潰しだったと祖父も澪も見逃して来たが―― 「なんも」