ふと、架が顔を覗き込んできた。


はっと意識を現実に戻せば、学校の門は間近。


架は心配そうな顔をしている。


怪我? それなら昨日、致死量の怪我をした。


黎によって綺麗に消されたけれど。


「ううん。ないけど?」
 

あの傷は、何と説明していいのかわからない。


あまりにも大きな問題なので、あの死にかけた傷はなかったものにしよう。


あるのは、生かしてくれた黎の証だけでいい。


「そう? ならいいんだけど」
 

そこで、架に取り巻く女子生徒たちが見えたので、真紅は適当に理由をつけ一人足早に校門をくぐった。