美しい銀色の髪は一度結い上げられてから背中を流れ、足元まで伸びている。
纏っているのは着物だが、重そうには見えない。
腕にはそれこそ天女の羽衣のような領巾(ひれ)が巻かれ、その面差しは優し気な透明感がある。
瞳の色も、髪と同じ銀色だ。
(黎と似てる――)
その瞳の色と、黎の瞳の色。そして、黒藤の髪に混ざった銀。
「白桜様がお待ちでいらっしゃいますわ。真紅お嬢様、涙雨殿」
「あっ、は、はいっ。……えーと……?」
いきなりお嬢様なんて言われて面喰ってしまった。
「わたくしは天音と申します。白桜様がお生まれになった頃よりの配下(はいか)ですわ」
さ、中へ、と天音は導くように身を翻した。
真紅は肩口の涙雨を見た。
肯(うなず)かれたので、真紅は天音のあとに続いた。



