――百合緋の憑き物は、祓ってはいけない類のもの。
そして百合緋は、黒藤との仲が険悪だ。
白桜にとっては、生まれた時より傍にいる妹のような親友。
百合緋も白桜が女の子だと知る数少ない一人なのだが、その白桜を嫁にする! と堂々と宣言する黒藤に対しては反感しかないようだ。
三人集まれば自分だけが護られる対象であるのも嫌らしい。
「ん?」
ふと、白桜の耳に言霊が届いた。
白桜は、式に下していなくても、《契約》した妖異や、神や鬼の類と声の送り合いが出来る。
妖力が高いものではないとその声は人語にはならないが、白桜はそうではないものの声も聞くことが出来る。



