好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「紅緒様は、真紅を術師として育てるおつもりなんだろう? なら、真紅は誕生日を迎えても死なないってことだ」
 

白桜の楽観的な言葉に、黒藤は否(いな)やを唱えた。


「それは母上の希望的観測に過ぎない。……真紅の力を封じることは、無涯が亡いなって大分弱っておられたときのご決断でもある」


「………」
 

苦い顔をする黒藤を、白桜は横目に見た。


永遠の恋人を失くした紅緒。家のことが嫌いな、小路流の先代当主。


「お前の」
 

白桜の落ち着いた声に、黒藤が顔をあげた。


「お前の母君は、お強い方だ。小路を護り、鬼神(きしん)を婿とされたほどに、な」


「………」
 

黒藤は表情を変えない。


それは、白桜以外が口にすれば簡単に暴発する、黒藤の地雷だ。
 

――黒藤の父もまた、人間(ひと)ではない。