好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「……いい加減『たいおん』って呼ばないと、また怒り散らすんじゃないか?」


「あいつの言い分を一方的に聞くのは嫌だ」
 

白桜は子どものようにそっぽを向いた。


黒藤は、今度は心中でため息をつく。
 

たいおん――太陰。月の化身。


「海雨も死なせらんねえが、黎も死なせらんねえな」
 

黒藤は話を戻した。白桜は黙然と肯く。


「黎の方にはさっき、無月を遣(や)った。無月は黎に逢ったことがあるから、異常があれば知らせてくる。海雨の方は……」
 

黒藤が言いよどむと、白桜は視線を黒藤に戻した。


「真紅が自分から言い出したんだが、浄化を真紅がやるのも手じゃないか?」


「……それは、出来るようになるまで時間がかかるだろう」