自分は確かに、この人に命をあげたはずなのに。 「死ぬよ。俺が血をもらうからな」 黎明の吸血鬼は、立ち上がった。 真紅はびくりと身体を震わせ、布団で身体を護るように握り締めた。 「じゃ――」 「でも、今じゃない」 黎明の吸血鬼は足を停めた。 「………」 真紅は長身のその瞳を睨み上げる。 銀――さっきは月を背負っていた、その瞳の色。人間にこんな目の色はあっただろうか。 「今は死なせてやらない。俺は真紅の血がほしいから、死なせたくない」