好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


 
自分は確かに、この人に命をあげたはずなのに。


「死ぬよ。俺が血をもらうからな」
 

黎明の吸血鬼は、立ち上がった。


真紅はびくりと身体を震わせ、布団で身体を護るように握り締めた。


「じゃ――」


「でも、今じゃない」
 

黎明の吸血鬼は足を停めた。


「………」
 

真紅は長身のその瞳を睨み上げる。


銀――さっきは月を背負っていた、その瞳の色。人間にこんな目の色はあっただろうか。


「今は死なせてやらない。俺は真紅の血がほしいから、死なせたくない」