好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「~~~まだすきだって自覚したばっかなんだよ……。ねえ、ママは……すきな人っていたの?」


「ママに? それって、旦那様のことをすきだったかってこと?」
 

母は、父を『旦那様』と呼んでいる。


そう呼ぶくらいだってことは……。


「特に旦那様に恋愛感情はなかったわねえ。許嫁にされてはいたけど、兄妹みたいに育った人だったし、男の人がすきなのも知っていたし」


「えっ、知ってたのっ?」


「ええ。だから、こんな結婚やめようって言ったこともあるんだけどね。

旦那様、生真面目気質だったから、肯かなかったわ。それが一気に爆発して蒸発しちゃった感じかしらねえ」


「………」
 

母はのんびりと話すが、真紅はそこまでは知らなかった。