誰にも話せない……話してはならない。
 

白桜は続ける。


「守秘義務なんてものがある以前からの、陰陽師の掟。破れば相応の罰を喰らう、法理よりもいにしえの、人の約束だ」


「―――……」
 

いにしえの、人の約束……。血に刻まれた性(さが)。
 

白桜は真紅から視線を逸らした。


「このことへの返事は急がない。急を要するのは黎明のに流れる真紅の血のことだな。

そして、紅緒様が目覚めたあとの影小路への対応をどうするか。

……影小路に入る決意は、揺らいでいないか?」
 

真紅が架にだけ伝えた言葉。白桜は承知の上だったか。


「………」


真紅は、唇を引き結んで答えなかった。