「……条件?」
真紅が訊き返すと、白桜の足が停まった。
つられて、真紅と架も。
「一つは、誕生日を無事に迎え生来の力を取り戻し、かつコントロールすることが出来ること。
大きな力は、扱い切れずに暴走して、術者本人を殺してしまうこともある」
「………」
「二つ目は、陰陽師としての訓練――鍛錬とも言おうか、修行を受けること。
真紅は小路の血筋だから、小路流の陰陽師となること。それから――」
不意に白桜は、言葉を切った。真紅はただ、見上げる。
白桜の瞳が、三日月のような鋭さで見返して来た。
「……陰陽師となって知ったことを、墓場まで持って行く気概があるかどうか、だ。
伴侶や親と言えど口にしてはならない依頼を、多く受けるのが陰陽師だ。
依頼の内容や結末に心を痛めても、その理由は誰にも話してはならない。悟られてもならない。
口に出して辛さを緩和することは、俺たちには赦されない。
……それでも、望むか?」
白桜の厳しい言葉に、真紅は思わず喉をひくつかせた。



