「海雨は現在ドナー待ちなんだろう? 長いこと瘴気(しょうき)――妖異の気配にさらされていて、身体は弱っている。

ああ、回復のまじないもかけられるから、命の心配はしなくていい。ただ、臓器が弱っているのは少々厄介だ」


「それは、浄化がうまくいっても、ドナーは必要だと言うこと?」
 

見上げる真紅に、白桜は厳しい面持ちで告げる。


「それは、どれだけ上手く浄化が出来たかによる。

身体の中の隅々まで、妖異の残滓が取り除ければ臓器への障害も薄れるかもしれない。だが、失敗すれば……」


「………」
 

その可能性の続きは聞きたくない、と思い真紅は黙った。


白桜はそれも察してか、口にはしなかった。


「依頼者は真紅だから、真紅の意見にもよるが、俺か黒が請け負うことになると思う。俺はともかく、黒なら失敗はないさ」