好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



静かな声で制されて、真紅は口をつぐんだ。
 

悪いこと口にすれば……


「兄貴ね、彼女とかいたことないんだよ」
 

ふと、架はそんな話を切り出した。


真紅はやや面喰いつつ、眉根を寄せた。


「……さっき白ちゃんに、黎のことは知らないって言わなかった?」


「接触は少ない、って言っただけだよ。家のこととか血筋のこととかあって、独りになるように自分で仕組んでいたから。

そんな人が、自分から真紅ちゃんには逢いに行った。その行動だけは、信じてあげて」
 

二度、黎の方から真紅を訪ねてくれた。


逢いに来たのが迷惑だったか? と問われたときは、抱き付いてしまいたいほど嬉しかった。


「……嬉し、かった」