静かな声で制されて、真紅は口をつぐんだ。
悪いこと口にすれば……
「兄貴ね、彼女とかいたことないんだよ」
ふと、架はそんな話を切り出した。
真紅はやや面喰いつつ、眉根を寄せた。
「……さっき白ちゃんに、黎のことは知らないって言わなかった?」
「接触は少ない、って言っただけだよ。家のこととか血筋のこととかあって、独りになるように自分で仕組んでいたから。
そんな人が、自分から真紅ちゃんには逢いに行った。その行動だけは、信じてあげて」
二度、黎の方から真紅を訪ねてくれた。
逢いに来たのが迷惑だったか? と問われたときは、抱き付いてしまいたいほど嬉しかった。
「……嬉し、かった」



