好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「……白ちゃんのことはなんて説明すればいいかな?」


「病室には入らないよ。その姿を一度窺えれば、真紅の懸念も少しはわかるかもしれない」
 

確かに、白桜はすでに当主と聞く。


ならば、白桜に海雨のことも見てもらった方がいいかもしれない。


「じゃあ……白ちゃんも一緒に来てもらえる?」


「当然だ。架は?」


「……貴方の傍にはいたくないですが、真紅ちゃんの傍にはいます」
 

架は苦虫を噛み潰しまくっている表情で言った。


そんなに苦手なら帰ってもいいのに……言おうとしたけど、母が去ったときも残った架を言いくるめる自信はなかった。


「賢明だな。では、行くか」
 

破凛――『はりん』という硝子が割れるような澄んだ音が真紅の耳に響いた。


次の瞬間には、今までとは違う空気の、しかし同じ景色の中にいた。
 

道を歩く生徒の姿がいつの間にか見えていた。