「……白ちゃんのことはなんて説明すればいいかな?」
「病室には入らないよ。その姿を一度窺えれば、真紅の懸念も少しはわかるかもしれない」
確かに、白桜はすでに当主と聞く。
ならば、白桜に海雨のことも見てもらった方がいいかもしれない。
「じゃあ……白ちゃんも一緒に来てもらえる?」
「当然だ。架は?」
「……貴方の傍にはいたくないですが、真紅ちゃんの傍にはいます」
架は苦虫を噛み潰しまくっている表情で言った。
そんなに苦手なら帰ってもいいのに……言おうとしたけど、母が去ったときも残った架を言いくるめる自信はなかった。
「賢明だな。では、行くか」
破凛――『はりん』という硝子が割れるような澄んだ音が真紅の耳に響いた。
次の瞬間には、今までとは違う空気の、しかし同じ景色の中にいた。
道を歩く生徒の姿がいつの間にか見えていた。



