もとより、架は黎と違って桜城の家を誇りに思っている。


だから、ある程度は知っていて当然かもしれない。


(だから、家に興味を持てって……)
 

言ったのか。


「黎? ……今日はどうする? 澪なら先に帰ってきているが」
 

今日で二日目。血をいただく日だ。


だが、古人に問われて胸にうずまいたのは、気持ち悪さだった。


「……いらねえ」


「明日にするのか?」


「違う。……もう、澪の血はいらねえ」
 

そのまま、黎はふらりと古人の私室を出た。