好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】




「れ――兄貴!」
 

公園を出る前に黎に追いついた架は、そう呼んだ。黎は緩慢(かんまん)に振り返る。


「架……お前よくあんな口上手くなったな」


「兄貴が家にいない所為で色々処世術を。それより……」


「なんだよ。病院、無理に抜けて来てるから戻らねえと澪がうっせんだけど」


「みおって……兄貴に血をあげてる人だっけ?」


「いらねえって言ってんだけどな」


「それって、真紅ちゃんの血なら欲しいってこと?」


「………」
 

架の誰何(すいか)に、黎は目を細めて睨んで来た。架はため息をつく。


「古人様は、兄貴と真紅ちゃんのこと知ってるの?」