5月の空は不安定だ。
底のない青が続いたと思えば、絶望的な雲で覆われる。
この時期の雨は無性に冷たい。
どうしようもないくらいに凍えそうな雨。
風は心地良いと思うのに、雨は酷く肌に纏わりついて、教室の中にいるというのに、体の温度を攫っていくんだ。


「はぁぁ…」


自分でも気付かぬうちに盛大な溜息を吐いてしまっていた。
この溜息は誰にも気付かれない。
HR前のガヤガヤしてる、騒ぎの中で掻き消されて…そう、思っていたのに。


「…何?どうしたの?直翔。凄い溜息なんだけど…」


少し苦笑して声を掛けて来たのは、中学時代からの親友、牧野佑介(まきのゆうすけ)。
俺の顔を覗き込んで、心配そうにしている。


佑介の事は、周りから「お前らデキてんじゃねーの?」とからかわれるほど、世界で一番の親友で理解者だ。


…だけど、今はそれがとてもキツい。