これまで、付き合ってきた相手は全員、ひどいものだった。
高校時代の彼は若さゆえなのか、毎回身体を求められ、短大生のときの彼は浮気性だった。社会人になって、一度言い寄られた相手はいたが、既婚者という仕打ち。
ここまで男運がないと、鈴音の性格上、恋愛に対して積極的ではなくなる。
幼少期に両親が離婚した経緯もあるせいか、元々、恋愛は必須項目には入っていない。
だから結婚なんて夢見たことはないし、このままでもいいと思っていたのだが。
(どうして、ああいう変なのばかり来るの)
溜め息を吐き、項垂れる。
平気なわけではない。しかし、甘え下手もあってうまく人に頼れない。
すぐ側で仕事をしている、上司の佐々原広臣(ささはらひろおみ)を横目で見る。
「ん? あ、お疲れ様。上がっていいよ」
「えっ。は、はい……じゃあ、お先に失礼します」
不意に顔を上げられ、迷っていた言葉が引っ込む。やはり、うまく切り出せずに、とぼとぼと売り場を後にした。
(この辺は人通りも多いし、もし本当にいたら、走ってすぐタクシーに乗るか、会社に戻るかすれば……)
更衣室で着替えながら、自分を奮い立たせる。
唯一、この百貨店で親しい友人は今日不在だ。なおさら、自分がしっかりしなければ、と口を引き結んだ。



