「だいたい、必要なものはこれで揃ったかな?」
柳多はトランクに荷物を運び、ショップバッグを見て言った。
鈴音は唖然として、柳多の斜め後ろに立っていた。
それもそのはず。どれも高価なブランド店で購入したものだからだ。
洋服はもちろん、バッグに靴、アクセサリーまで。それも、ひとつずつではない。何パターンかコーディネートできるくらいには購入したこともわかっている。
(こんな買い物の仕方なんてしたことがない。いったい、いくら使ったの?)
大企業の御曹司でもある忍にしたら、大したことではないのかもしれない。
鈴音はそう考えるものの、やっぱり普通ではない状況に言葉が出ない。
「あとは、副社長が用意するだろうから」
柳多がトランクをバン!と閉め、鈴音に笑いかける。
「こ、これ以上、まだなにか……?」
度肝を抜かれた鈴音は、この上なく瞳を大きくさせた。
「まぁ、社長は副社長と違って、昔から派手なものが好きだからね」
「柳多さんは、黒瀧さんのお父様をよくご存じなんですね」
柳多にとっては、自社の社長なわけで知らないわけがない。それは鈴音も承知してはいたが、服や小物を選ぶ時も、ほとんど悩むことなくセレクトしてくれたため、社長という人間を熟知しているのだと思った。
すると、柳多は少し俯いて困ったように笑う。
「ほかの社員よりは顔を合わすことが多いかもしれないけれど、よく知っているかと聞かれたら、どうかな」
小さく首を傾げる柳多に、鈴音は抱えていた不安を吐露する。
「私、全然知らないんです。彼からなにも聞いていないとか、そういうこと以前に、ローレンスの社長としての情報すらも」
昨夜から、考えることと言えば忍のこと。
そして、結婚にあたっての条件はもちろん、彼自身のことすらわからなかった。
出会って間もないワケあり事情とはいえ、あまりに知らなすぎると思ってローレンス社のホームページを開いてもみた。
しかし、当然ながら、ホームページに社長の性格や好み、副社長の思惑など載っているわけもない。
わかったことと言えば、会社の資本金や事業展開、経営ビジョンくらいのものだ。
ただ、その一般的な情報ですら、鈴音にとっては縁遠く感じる。それから突如、大きな不安に襲われた。
柳多はトランクに荷物を運び、ショップバッグを見て言った。
鈴音は唖然として、柳多の斜め後ろに立っていた。
それもそのはず。どれも高価なブランド店で購入したものだからだ。
洋服はもちろん、バッグに靴、アクセサリーまで。それも、ひとつずつではない。何パターンかコーディネートできるくらいには購入したこともわかっている。
(こんな買い物の仕方なんてしたことがない。いったい、いくら使ったの?)
大企業の御曹司でもある忍にしたら、大したことではないのかもしれない。
鈴音はそう考えるものの、やっぱり普通ではない状況に言葉が出ない。
「あとは、副社長が用意するだろうから」
柳多がトランクをバン!と閉め、鈴音に笑いかける。
「こ、これ以上、まだなにか……?」
度肝を抜かれた鈴音は、この上なく瞳を大きくさせた。
「まぁ、社長は副社長と違って、昔から派手なものが好きだからね」
「柳多さんは、黒瀧さんのお父様をよくご存じなんですね」
柳多にとっては、自社の社長なわけで知らないわけがない。それは鈴音も承知してはいたが、服や小物を選ぶ時も、ほとんど悩むことなくセレクトしてくれたため、社長という人間を熟知しているのだと思った。
すると、柳多は少し俯いて困ったように笑う。
「ほかの社員よりは顔を合わすことが多いかもしれないけれど、よく知っているかと聞かれたら、どうかな」
小さく首を傾げる柳多に、鈴音は抱えていた不安を吐露する。
「私、全然知らないんです。彼からなにも聞いていないとか、そういうこと以前に、ローレンスの社長としての情報すらも」
昨夜から、考えることと言えば忍のこと。
そして、結婚にあたっての条件はもちろん、彼自身のことすらわからなかった。
出会って間もないワケあり事情とはいえ、あまりに知らなすぎると思ってローレンス社のホームページを開いてもみた。
しかし、当然ながら、ホームページに社長の性格や好み、副社長の思惑など載っているわけもない。
わかったことと言えば、会社の資本金や事業展開、経営ビジョンくらいのものだ。
ただ、その一般的な情報ですら、鈴音にとっては縁遠く感じる。それから突如、大きな不安に襲われた。



