インターフォンが鳴ったのは、十一時きっかりだった。
改めて約束をして会う、というのはとても緊張してしまう。
鈴音は玄関の前で一度呼吸を整えてから、そっとドアを押し開けた。その後、思わず声を漏らす。
「えっ」
「こんにちは。初めまして。私はローレンス社秘書室室長をしております、柳多倫也(やなぎだみちなり)と申します。以後、お見知りおきを」
「あ……はい」
忍とは少しタイプの違う、柔らかな顔立ち。
茶色がかった髪はサイドに流して、清潔感がある。やや垂れた目を細められると、その優しい表情につい気を緩ませてしまう。
「準備はお済みですか?」
「え? あ、大丈夫です!」
柳多は、鈴音の返しに無言でにっこりと口角を上げる。鈴音は、その落ち着いた雰囲気から、忍よりも年上だろうかと考えた。
(と言っても、老けているわけじゃないし、むしろ顔は若く見えるような。そもそも、黒瀧さんの年齢も知らないな)
「それでは。行きましょう」
柳多は表情だけでなく、喋り方もソフトだからか、断然、忍よりも話しやすそうに感じた。
筋肉質でしっかりした体型の忍と比べ、柳多は細身に見える。
柳多の背中を追うように、少し距離をとって後に続く。車が見えたところで、鈴音はぽつりと尋ねた。
「あの……黒瀧さんは?」
「本日、副社長は外せない会議がありますので。代わりに、と命じられました」
「そ、そうなんですね」
「よろしいですか?」
「はっ、はい。どうぞ、よろしくお願いします」
挙動不審になりながら、ぺこりと頭を下げる。
てっきり今日は忍が来るものだと思っていた。だから、さっきまでの緊張が解け、脱力してしまう。
停めていたいた車は、以前、忍と会ったときとは違うハイブリット車だった。
「どうぞこちらへ」
柳多は後部ドアを開け、エスコートするが鈴音はどうも落ち着かない。 車に乗り込みづらくて、立ち止まったままおどおどと言う。
「あ、あの、そんなに気を遣っていただかなくても……」
「副社長の奥様になられる方ですから」
「いや、それは……」
改めて約束をして会う、というのはとても緊張してしまう。
鈴音は玄関の前で一度呼吸を整えてから、そっとドアを押し開けた。その後、思わず声を漏らす。
「えっ」
「こんにちは。初めまして。私はローレンス社秘書室室長をしております、柳多倫也(やなぎだみちなり)と申します。以後、お見知りおきを」
「あ……はい」
忍とは少しタイプの違う、柔らかな顔立ち。
茶色がかった髪はサイドに流して、清潔感がある。やや垂れた目を細められると、その優しい表情につい気を緩ませてしまう。
「準備はお済みですか?」
「え? あ、大丈夫です!」
柳多は、鈴音の返しに無言でにっこりと口角を上げる。鈴音は、その落ち着いた雰囲気から、忍よりも年上だろうかと考えた。
(と言っても、老けているわけじゃないし、むしろ顔は若く見えるような。そもそも、黒瀧さんの年齢も知らないな)
「それでは。行きましょう」
柳多は表情だけでなく、喋り方もソフトだからか、断然、忍よりも話しやすそうに感じた。
筋肉質でしっかりした体型の忍と比べ、柳多は細身に見える。
柳多の背中を追うように、少し距離をとって後に続く。車が見えたところで、鈴音はぽつりと尋ねた。
「あの……黒瀧さんは?」
「本日、副社長は外せない会議がありますので。代わりに、と命じられました」
「そ、そうなんですね」
「よろしいですか?」
「はっ、はい。どうぞ、よろしくお願いします」
挙動不審になりながら、ぺこりと頭を下げる。
てっきり今日は忍が来るものだと思っていた。だから、さっきまでの緊張が解け、脱力してしまう。
停めていたいた車は、以前、忍と会ったときとは違うハイブリット車だった。
「どうぞこちらへ」
柳多は後部ドアを開け、エスコートするが鈴音はどうも落ち着かない。 車に乗り込みづらくて、立ち止まったままおどおどと言う。
「あ、あの、そんなに気を遣っていただかなくても……」
「副社長の奥様になられる方ですから」
「いや、それは……」