* * *
「ありがとうございました。またのお越しを心よりお待ちいたしております」
恭しく頭を下げ、数秒後ゆっくりと上半身を戻す。客は振り返ることなく、ショップバッグをぶら提げて行った。
(今のお客さん、すごいな)
心の中で呟いたのは、海外ブランドCervino(チェルヴィーノ)直営店で働く山崎鈴音(やまざきすずね)。
彼女が勤めるショップは、レザー商品や筆記具、メンズ向けアクセサリーなどを取り扱う。
今去って行った客は、かなり値段のいい商品にも関わらず即決し、さらには鈴音が勧めたものを迷わず追加し、購入していった。
背も高く、顔立ちも綺麗な男。表情を崩さず、少し近寄りがたい雰囲気を纏い、言動に無駄がなかったのもあって、鈴音は接客中とても緊張した。
なにがいちばん驚いたかというと、まだ二十代後半くらいに見えたのに、ブラックカードを出されたこと。
(どこかの御曹司なのかも……)
「あの」
「いらっしゃいませ」
すでに姿が見えなくなっているのに、客が向かって行った方向を見てボーッとしていた。横から声を掛けられ、慌てて笑顔を作り、対応する。
「ありがとうございました。またのお越しを心よりお待ちいたしております」
恭しく頭を下げ、数秒後ゆっくりと上半身を戻す。客は振り返ることなく、ショップバッグをぶら提げて行った。
(今のお客さん、すごいな)
心の中で呟いたのは、海外ブランドCervino(チェルヴィーノ)直営店で働く山崎鈴音(やまざきすずね)。
彼女が勤めるショップは、レザー商品や筆記具、メンズ向けアクセサリーなどを取り扱う。
今去って行った客は、かなり値段のいい商品にも関わらず即決し、さらには鈴音が勧めたものを迷わず追加し、購入していった。
背も高く、顔立ちも綺麗な男。表情を崩さず、少し近寄りがたい雰囲気を纏い、言動に無駄がなかったのもあって、鈴音は接客中とても緊張した。
なにがいちばん驚いたかというと、まだ二十代後半くらいに見えたのに、ブラックカードを出されたこと。
(どこかの御曹司なのかも……)
「あの」
「いらっしゃいませ」
すでに姿が見えなくなっているのに、客が向かって行った方向を見てボーッとしていた。横から声を掛けられ、慌てて笑顔を作り、対応する。