契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました

「忍さんはいつも自信家ですね」
「そんなことはない。きみに関しては相当悩んだ」

忍の言葉には、さらに意表を突かれた。

こんなに相手の感情がわかりやすいのは不慣れで、しどろもどろとしてしまう。

視線を泳がせていると、忍が手をすっと伸ばす。
けれど、頬に触れそうで触れない。

鈴音は内心その手にドキドキとし、忍は手を浮かせたまま呟いた。

「……今も。触れてもいいのか躊躇してる」

鈴音は驚いた顔を見せたあと、すぐそばにある忍の手に自分の手を重ねる。

「変ですね。普通に抱き上げたりしていたのに」

そうして自ら自分の頬へ忍の手を触れさせた。

「気持ちを解放した今、一度触れたら止まらなくなる」

忍の温かさを感じ始めた矢先、顔に影を落とされる。