「メディアは好かない。だけど、それを利用すれば、きみに伝えられると思ったんだ。我ながらあのときは切羽詰まっていて短絡思考だったよ」
上昇していくランプを見上げたまま、忍は失笑する。
「今の世の中、ああやってずっと残ってしまうのに」
最上階に着き、忍が先に降りる。
鈴音は無言で後に続き、玄関へ入った。忍が先にリビングへ向かったときに、投げかける。
「私はうれしいです」
忍の元へ歩いて行き、顔を見上げて微笑む。
「いつもは冷静な忍さんが短絡思考に陥ってしまうことや、形に残るもので気持ちを伝えてくれたことが」
鈴音は忍をほんの少しでも狂わせる影響力が自分にあると知れて、素直に喜んだ。
忍は一歩鈴音に歩み寄り、右手を差し出す。
なにかと思って両手で受け皿を作るとコロンとスティック状のものが落ちてくる。
そこにさっきで動画で見たばかりの新作のロゴが目に入った。
「形にね……。鈴音。日にちはもう少し後にずらしていい。ちゃんと式を挙げよう。鈴音の家族も呼んで」
白い小さな箱。それは確かに携帯の画面の中で、忍が手にしていたリップだ。
「そのときは、そのリップを使って。この間のウエディングドレス姿に似合うはずだ」
鈴音は宝物を手にしたように静かにリップを握り、凛とした表情を向ける。
「その前に、忍さんのお父様に挨拶しなおさなければならないです」
以前、挨拶をしなければならないといったときにはおどおどとしていたのに、今は打って変わって堂々としている。
「私は社長の姪なんかじゃないから、認めてもらえないかもしれませんね。……面倒だ、って後悔していませんか?」
「後悔なんてしない。解決すればいいだけの話だ」
迷うことなく頼もしい回答が返って来て、鈴音は目を丸くし、そして「ふっ」と笑った。
上昇していくランプを見上げたまま、忍は失笑する。
「今の世の中、ああやってずっと残ってしまうのに」
最上階に着き、忍が先に降りる。
鈴音は無言で後に続き、玄関へ入った。忍が先にリビングへ向かったときに、投げかける。
「私はうれしいです」
忍の元へ歩いて行き、顔を見上げて微笑む。
「いつもは冷静な忍さんが短絡思考に陥ってしまうことや、形に残るもので気持ちを伝えてくれたことが」
鈴音は忍をほんの少しでも狂わせる影響力が自分にあると知れて、素直に喜んだ。
忍は一歩鈴音に歩み寄り、右手を差し出す。
なにかと思って両手で受け皿を作るとコロンとスティック状のものが落ちてくる。
そこにさっきで動画で見たばかりの新作のロゴが目に入った。
「形にね……。鈴音。日にちはもう少し後にずらしていい。ちゃんと式を挙げよう。鈴音の家族も呼んで」
白い小さな箱。それは確かに携帯の画面の中で、忍が手にしていたリップだ。
「そのときは、そのリップを使って。この間のウエディングドレス姿に似合うはずだ」
鈴音は宝物を手にしたように静かにリップを握り、凛とした表情を向ける。
「その前に、忍さんのお父様に挨拶しなおさなければならないです」
以前、挨拶をしなければならないといったときにはおどおどとしていたのに、今は打って変わって堂々としている。
「私は社長の姪なんかじゃないから、認めてもらえないかもしれませんね。……面倒だ、って後悔していませんか?」
「後悔なんてしない。解決すればいいだけの話だ」
迷うことなく頼もしい回答が返って来て、鈴音は目を丸くし、そして「ふっ」と笑った。



