「やっぱり、兄のお嫁さんが鈴音さんでよかった」
「え?」
自虐的な思いを抱えていた鈴音に、晴れやかな声が届く。
自然と顔が上がり、明理と視線を合わせた。すると、明理が頭を軽く横に傾け、にっこりと微笑む。
「鈴音さんも、兄と同じでとても優しい人だろうと思ってたから」
明理の言葉がうれしくて、悲しい。
鈴音は表情に出さぬよう、必死で耐えた。
「本来ならお義姉さんにお願いすることではないんですけれど」
明理は鈴音の本心に気づくこともなく、カバンから白い封筒を取り出した。
両手で差し出され、鈴音はおずおずとそれを受け取る。
「これは……?」
「どうぞ、今見てくださって構いません」
明理は運ばれてきた料理に手も付けず、満面の笑みで鈴音を見続ける。鈴音はそーっと覗くように封筒の中を見た。
「無料ペア宿泊券……?」
「大学のイベントでたまたま当たったんです、それ」
「ええっ! すごい!」
さっきは年齢のことで驚いていたけれど、O大と言えば国立で有名な女子大だ。
聡明なイメージ通り、頭脳も明晰なのだと感嘆の息を漏らした。
しかし、今手にしている宿泊券は、いったいどういうことなのか首を捻る。
「兄は忙しいと言って旅行やイベントには取り合ってくれないんです。確かに忙しいのはわかるんだけれど、一日二日、いいと思いませんか?」
「え? ああ。忍さんへですか?」
「はい。きっと、お義姉さんのお願いだったら聞いてくれると思うんですよね。私が直接渡すと、『お前と母さんで行け』って言われるのがオチですから」
明理の予想を聞き、鈴音は思わず「なるほど……」と口に出していた。
鈴音が知る忍も、やはり仕事に専念していて休暇を取らない傾向があるようだ。特に目的もない旅行なら、妹と母に譲るのが明瞭だ。
鈴音が封筒から半分出した宿泊券に目を落としていると、明理が両手を合わせて言う。
「え?」
自虐的な思いを抱えていた鈴音に、晴れやかな声が届く。
自然と顔が上がり、明理と視線を合わせた。すると、明理が頭を軽く横に傾け、にっこりと微笑む。
「鈴音さんも、兄と同じでとても優しい人だろうと思ってたから」
明理の言葉がうれしくて、悲しい。
鈴音は表情に出さぬよう、必死で耐えた。
「本来ならお義姉さんにお願いすることではないんですけれど」
明理は鈴音の本心に気づくこともなく、カバンから白い封筒を取り出した。
両手で差し出され、鈴音はおずおずとそれを受け取る。
「これは……?」
「どうぞ、今見てくださって構いません」
明理は運ばれてきた料理に手も付けず、満面の笑みで鈴音を見続ける。鈴音はそーっと覗くように封筒の中を見た。
「無料ペア宿泊券……?」
「大学のイベントでたまたま当たったんです、それ」
「ええっ! すごい!」
さっきは年齢のことで驚いていたけれど、O大と言えば国立で有名な女子大だ。
聡明なイメージ通り、頭脳も明晰なのだと感嘆の息を漏らした。
しかし、今手にしている宿泊券は、いったいどういうことなのか首を捻る。
「兄は忙しいと言って旅行やイベントには取り合ってくれないんです。確かに忙しいのはわかるんだけれど、一日二日、いいと思いませんか?」
「え? ああ。忍さんへですか?」
「はい。きっと、お義姉さんのお願いだったら聞いてくれると思うんですよね。私が直接渡すと、『お前と母さんで行け』って言われるのがオチですから」
明理の予想を聞き、鈴音は思わず「なるほど……」と口に出していた。
鈴音が知る忍も、やはり仕事に専念していて休暇を取らない傾向があるようだ。特に目的もない旅行なら、妹と母に譲るのが明瞭だ。
鈴音が封筒から半分出した宿泊券に目を落としていると、明理が両手を合わせて言う。



