「だけど、お義姉さんにも私のことを説明できないくらい、兄のなかでは父の不倫相手の娘である妹は汚点なのでしょうね」
明理はずっと心に引っかかっていた。
わざわざ公言して回るような内容ではないことくらいわかっている。
けれど、頑なに口にしないところが、自分の存在を隠したがっているように思えるときがあって、ときどき悲しく感じていた。
「汚点だなんて思っていないよ。絶対に」
明理のぼやきに、鈴音は凛として否定する。
俯きかけていた明理は、鈴音のまっすぐな瞳に目を奪われた。
「明理さんのお兄さんは、あなたが思う通り、とても優しいよ」
彼のことをなにも知らないくせに、無責任な発言をしているとわかっていた。
だけど、鈴音には自信があった。
忍が明理にメイクをしてあげた話をしていたときの穏やかな顔は、明理への愛情の現れだったとわかるから。
「明理さんのことを隠したいわけじゃなくて、明理さんを傷つけたくないから守っているんだと私は思う」
「守っている……」
明理がきょとんとして鈴音の言葉を繰り返す。
鈴音はゆっくり目尻を下げた。
「それに、さっき明理さんも言っていたように、忍さんは口に出さないタイプでしょう? 明理さんのことを大事に思っているって、私にはすごく伝わってきてた」
彼はとても懐が深い。
鈴音は改めてそれを確認し、軽く睫毛を伏せる。そして、淋し気に微苦笑を浮かべた。
(今回のことは、ただ単に私だからわざわざ言わなかったのかも。〝本当の〟奥さんにはちゃんと説明していたのかもしれないし)
自分は契約妻だから。
鈴音はそう思うと、得も言われぬ複雑な気持ちになった。
そこに、オーダーしていたランチセットのオムライスがふた皿やってきた。
甘酸っぱいケチャップの香りと焼きたての卵のにおいに心が癒される。
明理はずっと心に引っかかっていた。
わざわざ公言して回るような内容ではないことくらいわかっている。
けれど、頑なに口にしないところが、自分の存在を隠したがっているように思えるときがあって、ときどき悲しく感じていた。
「汚点だなんて思っていないよ。絶対に」
明理のぼやきに、鈴音は凛として否定する。
俯きかけていた明理は、鈴音のまっすぐな瞳に目を奪われた。
「明理さんのお兄さんは、あなたが思う通り、とても優しいよ」
彼のことをなにも知らないくせに、無責任な発言をしているとわかっていた。
だけど、鈴音には自信があった。
忍が明理にメイクをしてあげた話をしていたときの穏やかな顔は、明理への愛情の現れだったとわかるから。
「明理さんのことを隠したいわけじゃなくて、明理さんを傷つけたくないから守っているんだと私は思う」
「守っている……」
明理がきょとんとして鈴音の言葉を繰り返す。
鈴音はゆっくり目尻を下げた。
「それに、さっき明理さんも言っていたように、忍さんは口に出さないタイプでしょう? 明理さんのことを大事に思っているって、私にはすごく伝わってきてた」
彼はとても懐が深い。
鈴音は改めてそれを確認し、軽く睫毛を伏せる。そして、淋し気に微苦笑を浮かべた。
(今回のことは、ただ単に私だからわざわざ言わなかったのかも。〝本当の〟奥さんにはちゃんと説明していたのかもしれないし)
自分は契約妻だから。
鈴音はそう思うと、得も言われぬ複雑な気持ちになった。
そこに、オーダーしていたランチセットのオムライスがふた皿やってきた。
甘酸っぱいケチャップの香りと焼きたての卵のにおいに心が癒される。



