ベンチに座り、一息つくが馨は黙ったまま。

こんなに馨と沈黙が続くのなんて初めてかもしれない。

「鞠子先輩と何かあった?ちょっとなら話聞いてあげるから」

いたたまれなくなり、いつもの恋愛相談相手になってやるかと重い腰を上げてみる。

「…結茉ってさ、ずっとそうやって俺の話、聞いてくれてたよな。なのに、俺自分のことばっかでお前の話ちゃんと聞いたことなかった」

「…ど、どうしたの?馨…やっぱり変だよね?いつもそんなこと気にしてなかったじゃん」

「…だから、アイツと付き合ってることも教えてもらえなかったのかなって今日ずっと考えてた」

アイツって…万里くんのこと?

「万里くんのこと言ってるの?あのね、万里くんは…」

今更ながらまだ付き合ってもいないのに盛大に勘違いをしている馨。

それについて訂正しようとした時。

「…俺、友達なのに、アイツと付き合ってること結茉から教えてもらえなくて…正直嫌だった。俺はお前に彼女のこととか含めて隠し事なんかしたことないのにってさ。でも…それ以上に結茉とアイツが付き合ってる話を聞きたくない俺がいて…」