……ぶっちゃけ、そこから先の記憶は曖昧だった。
グラスの中身半分も飲み切っていないのに、私は慌ててテーブルに5千円置くと、そのまま逃げるようにして居酒屋を出たところまではなんとなく覚えてる。
気がついたら、自分のベッドで布団頭から被って、顔ぐちゃぐちゃにして泣きはらしていたわ。
だってまさか、"男にしか興味ない"でフラれると思わなかったんだもの。
他に好きな女がいるなら、まだ諦めもつく。
女に興味はないって言い方なら、なんとか納得はできる。
――けど。
男にしか興味ない、だよ!?
男にしかって!
そんなフラれ方あるか!!
そりゃあ、いろんな人間がいるもの、同性を好きになる人もいて当たり前だけど。
でも、フラれたあげくに課長の"その部分"を知って、私これからどうやって接していけばいいっていうのよ!
今まで通りにできる?
……いや、できっこない。
私きっと課長の顔を見るたびに、男の人とイチャイチャしている課長を想像しちゃって、まともに顔を見れないような気がして仕方ない。
失恋した痛みよりも、課長がそうだったことにショックを隠せなかった。
だって女性である私がどんなに足掻いたって、男にしか興味がないんだから、課長の気持ちが変わるわけないんだもの。
「そりゃあ、彼女の噂もなけりゃ、結婚もしないわけだわ」
私の口から、つい乾いた笑いが漏れる。
知りたくなかった。
こんなことなら、自分の気持ちなんて伝えなきゃ良かった。
「ああもう、私どうしたらいいの……」
つい、本音が零れる。
その問いに、答えてくれる人はいるわけもなく。
その言葉は、ワンルームの部屋に虚しく響いて消えた。

