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――その日は職場の飲み会だった。

新年度になり新入社員も入ってきたことだしと、歓迎を兼ねて駅前の居酒屋でその飲み会は開かれていた。

終始、和気あいあいとしていて、自然とお酒も進む。

楽しい時間というのは、過ぎるのがとても早い。

あっという間にお開きの時間となり、そのまま何組か分かれて、それぞれ次のお店へと散っていった。

私は、というと、お酒の力もあったのだろう、上司である小島課長を誘い、落ち着いた昔ながらの居酒屋へと誘った。

洒落たBARではなく、敢えて居酒屋を選択したのには訳がある。

課長は大の焼酎好き。

その居酒屋は、焼酎の種類が豊富なことで有名なお店だった。


今日の一次会でも、一杯目はさすがにビールだったが、そのあとはずっと焼酎を頼み続けていた課長。

水割りから始まり、ラストはロックでちびちびと。

なぜ好きかと話を聞くと、もちろんただ単に好みであるというのもさることながら、焼酎は飲み過ぎても次の日あまり身体に残らないから、らしい。

そして日本酒ほど記憶を飛ばさないで済む、とも。

現に課長がくでんくでんに酔っぱらった姿を見たことがない。

常に"小島課長"を崩さない、できた人間だった。