もしかして。まさか。

……信じられない。

でも今、目の前の男はとても切なそうに私を見つめている。
その瞳は、今にも泣き出しそうに潤んでいる。


――本当に?

信じてもいいの?


「……課長」

「なんだ」

「好きです」


そう呟くと、課長は私をグッと抱きしめた。
厚く熱い胸板に、私の身体がすっぽりと埋まる。

課長の鼓動が私の身体に伝わって、涙が溢れた。


「俺もだ。アイツと飲みになんて行くな。今日は俺とずっと一緒にいろ」



……なんて幸せな言葉なんだろう。


行けるわけない。

課長が私のことを受け入れてくれたこの腕を、振り払うことなんてできない。




課長は身体を少し離すと、私の頬を両手で覆い、顔を見るように上に向けさせた。


そして、こう呟く。



「女を好きになったのは、お前が初めてだ。そして多分、これからもお前以外の女は愛せない。もちろん、男ももだ。俺の愛は重いぞ?覚悟はいいか?――那奈」


その言葉に、私は笑顔で頷く。


課長は私の答えに妖艶な笑みを浮かべると、唇を落とした。