まさか岬くんに気付かれているなんて。
自分では上手くやっていたつもりだったのに。
岬くんは気遣うような優し気な笑顔を私に向ける。
トクン、と胸が鳴る。
「もし僕でよければ相談にのりますよ。今日夜、空いてます?僕と飲みに行きませんか?実は僕、プライベートでゆっくり高原さんとふたりきりでお話したかったんです」
「えっ!?」
「高原さんが良ければ、ですけど」
ふたりきりって……。
岬くんと……?
岬くんは、私の3つ下。
課長とはまた違う、少し少年ぽさを含んだ笑みを浮かべる。
その笑顔に、胸がときめく。
ふたりきりで飲みに行くなんて、さほど特別なものじゃない。
ましてや同じ職場だし、仕事帰りになんてよくあることじゃない。
でも課長にショッキングな理由でフラれ、悶々としていた自分にとっては、その岬くんのお誘いがやけに特別なものに感じられてしまった。