家の前についてから、
先生は近くにあるベンチに腰を掛けた。

「普段は俺のこと、隼人って呼べよっ」

「先生こそ、秋桜って呼んでくれなきゃ嫌ですよっ」


こんなふうに話すのも、本当に久しぶり…。

幸せ、なんだよね。
嬉しすぎて、今にでも踊り出したいくらい
気持ちが高ぶった。

手と手が重なる。

私の左手の上に先生の右手が乗った。

無言のまま手は恋人繋ぎになる。

「キス、していいかな…」

小さい声で先生が言った。

「は、はい…」

目と目があって、自然とお互いの顔が近づく。

柔らかい…。

それが、感想。

ほかの人から見れば只の口と口を付ける行為。
でも、それだけでも私は嬉しかった。

「やっとできた…。」

はにかみながら先生は言う。

「大丈夫か、秋桜。
顔が赤いぞ。」

天然なのか。
それとも意地悪なのか。

「赤いのは、先生のせいじゃないですか…!」

「前にも言ったけど、その反応可愛いな。」

「え?!」

好きをついて先生はまたキスをしてくる。

「ん…ちょ、先生、ここ家の前ですよ…!」

「あ、忘れてた。」

焦ったように先生は腕を離し、
ベンチから立ち上がる。

「帰るか。」

私は先生の少し後ろを歩いてついて行った。