何事もないまま、年越しを迎え、私の心はなんとも言えないモヤモヤを抱えつつも、浮足立っていた。

今日は、いつもとはまた違って特別な日で。

あと数時間後にはもっと別な自分に生まれ変われる…そう、思ったから。



「ねぇ、お母さん。私、りょーたの所に行って来るね」


それは無意識に出た言葉だった。

毎年欠かさず、二人で近所の小さな神社にお参りに行っていたから。

…彼女さんがいても、そこだけは絶対に譲れないと自分に言い聞かせていたんだ。


でも、そう言った私にお母さんは曇り顔を見せる。


「…なに?なんか、あったの?」

「困ったわねぇ…どうしようかしら…」

「…お母さん?どうしたの?」


全然要領を得ない回答に、業を煮やして語尾を強くすると、お母さんは一つ深い溜息を吐いてから、私の方を見た。


「あのね、なな、よく聞いて?凌太くん、今…日本にいないのよ…」