「…………」

空港に向かう車内はとても静かだった。
俺は窓を流れていく景色の数々に涙を零しそうになり、ズズッと鼻をすする。
先生はそれに何も言わず、ティッシュボックスを差し出してくれた。


「さよなら」も「ばいばい」もないままで。
ただ「ありがとう」という清らかな言葉だけでキミの元を去る事が出来るなら、今はもうそれでいい。

俺は、瞳を瞑った。

好きだよ、好きだよ、なな。

無事にキミの元に戻る事が出来たなら、その時はもう容赦なく奪いに行くよ。
だから、それまで俺を忘れないでいて。

大嫌いでも、いい。
だから、忘れないでいて。

俺も、この心が擦り切れるほど、キミを好きだという言葉を飲み込んで、カラカラに渇かしてこの感情を封印していくよ。


なな以外はいらない。


俺は、なながいい。

だから、どうか、俺をキミの中から消さないで…。