「んじゃあ、お前さ。もっと経験積んでみればいいんじゃね?」

「…ん?何それ?」

「だからさ、お前とりあえず付き合っちゃえよ」

「誰と…?」

何だか、嫌な予感がしてジトっと仁の顔を見ると、まるで他人事のようなニヤっとした笑みを浮かべて来る。
その顔が悪魔のように見えるのは、俺だけなんだろうか…?

「ほれ、こないだの。2年。超絶かわいかったじゃん?」

「あー…。」

あれ、ね。

俺はそこで1コ先パイの長谷川瑶(はせがわよう)の事を思い出す。

『忘れちゃいなよ』

彼女はふわっと微笑んで、俺の肩に触れたんだ。

「………え?」

突然の告白に驚くというよりも、その真意が何処にあるのか分からずに、俺はジッと彼女の顔を見たんだっけ。

『忘れちゃいなよ。代わりにあたしが、凌太を幸せにするよ。絶対に…。』

どっから、そんな自信が来るのか分からない。
でも、なんとなくその場で「NO」が言えなくて、今の所答えは保留にしたままだ。